ウィス
「俊也君は今まで通り学校に通っているよ。よく家に来て掃除とかしていってくれる」
「…………」
「世良さんは相変わらず貧乏でね。金がねえ金がねえって、いっつも言っている。もう少し料金高くしてもいいのにね」
「…………」
「それと、今日はみんなが幸一の家に集まるから、帰りにケーキでも買って」
「ねえ、お姉ちゃん」
声に、私はハッと下を向いた。幸一が座る車椅子の辺りに大きいボールが転がっている。これを取りにきたんだろうか。
「あ、ごめんね。はい」
私は膝を折り、その子の目線の高さに合わせるとボールを手渡した。
それでもその子は何か不思議そうに私と幸一を見比べている。
「お姉ちゃん、なにしてるの?」
「お兄ちゃんと、お話しているんだよ」
「そこのお兄ちゃんと?」
「うん、そうだよ。そこのお兄ちゃんとお話しているの」
その子は……ボールを手に、不思議そうに小首を傾げて、言った。