ルウィス
「でもお兄ちゃん、おはななししないし、ぜんぜんうごかないね」
あの事件から一ヶ月……みんなは以前とは違うけど、それでも元の暮らしに戻ろうと生活を始めている。
幸一を除いて。
あれから、幸一は意識を失ったまま。植物状態、というやつらしい。
思念を飛ばすことも試したけど……成功や失敗以前に、幸一の心への跳躍そのものが出来なかった。考えられることは、二つ。
幸一の心は、あの悪魔と激しい鍔迫り合いを今でもしているために、介入を意図的に拒んでいる、というのが一つ。
もう一つは……あの悪魔とは相討ちで……心そのものが、すでに喪失したか……
どちらなのか、私にはわからない。
私にできたのは、お医者さんの『呼びかけていると、反応するかもしれません』という、実に頼りないワラに縋ることだけ。
「うん……それでもね、きっと、聞こえているよ」
「? そうなの?」
「……うん、きっと、ね」
「ゆうく〜ん! どうしたのー!」
その子は声をかけてきた子ども達に『うん!』と返事をすると、そちらに駆け出し……何か忘れたのか、こちらにまた戻ってきて、
「お兄ちゃん、はやくおきてね! お姉ちゃんがまってるよ!」
背伸びし、大声で幸一の耳元で叫ぶと、ボールを手に向こう側で待っている子ども達に向かって走っていく。
「……早く起きて、だって、幸一」